第三話 「震える心」

「私をつれて逃げて」

なんか、どこやらで聞いた事のあるようなくさいセルフ。

しかし彼女は「必死でした」

電話の声は、震え、泣いていた。

「どこにも寄り所のない不安な気持ちを、酒でごまかし、夜も眠れなかったのでしょう」

僕は「どうしたんですか」?

「もうだめ!死にたい!片山さん、助けて」

「・・・・」

返す言葉が出ない

「なんか言って」

あかねさんの声は、次第に小さくなっていった。

本当にこんな時、何も出来ない。いやどう対応して言いか僕にはわからなかった。

カッコよく「今どこですか」?なんて言葉もでない。

「死ぬなんて考えないで」なんて言葉も出ない。

みんなテレビの見すぎ(笑)

「あした来てくださいね」「お待ちしています」

なんてありきたりの言葉しか言えなかった!

酔ってるんで多分大丈夫かなって思ってた。

翌朝、あかねさんは朝一番でやってきた。

ノーメークで目は真っ赤

あかねさんは「夕べの事をぶっきらぼうに、ごめんね」というと

いきなりメークの出来ない僕に、「メークして頂戴」

「僕まだメイクようわかりません」

「いいの!片山さんして」

「ブルーのシャドーをして」

「ブルーですか」?

リップもまともに塗れない僕の手は震えていた。

それ以上に「震えていた」あかねさんの「心」を、このとき僕は、まだわからずにいた。

出来上がったメイク姿は、お世辞にもかわいくなかった。

しかし彼女はその顔のまま近くのデパート「大丸」に買い物に出かけた。

そして思いがけない姿で、彼女は僕の目の前に現れてきた。

さあどんな姿で、彼女は・・・

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