第二話・・・

「バブルがはじけたのも随分昔のように感じる」

いや、そのバブルさえ経験した事の人さえ増えてきている。

今も昔も「大切」なものは何も変わっていないのに、時に「時代」は人々に

過酷な試練を与えます。

あかねさんの家にもその波は押し寄せていた。

勢いのいい時、回りはちやほやするが、いざ会社が傾くと手のひらを返したように冷たくなるのも世の常。

しかし、彼女はそんな逆境も、持ち前の天真爛漫さで、当店に通っていた。

美容室には、なぜか「情報」が集まる。女性特有の「おしゃべり」からだ。

しかし、僕らはそんな「情報」にはあまり流されない。

いつもニュートラルな状態でヘアーを扱いたいからだ。

あかねさんの要求は、だんだんエスカレートしていった。

なぜそうなっていったのか、彼女は、髪型を変えるのが楽しくなっていた。

通常「クセ毛」の場合、クセを目立たなくしたいと思う。しかし、僕は目立たせた。
いや、それしかテクニックをもっていなかった(笑)

アシンメトリーから刈り上げ、ツーブロック、当時であればかなり斬新といわれる髪型を
ことごとくオーダーしてきた。

今思う。決してデザイン的にはキレイではなかったはず。しかし彼女は、僕以外は指名しなかった。(←ここ重要)

最初、ほとんどオーダーを聞いても答えなかった、彼女の心のわだかまりは、すでになく
逆に、似合う・似合わないということを超えて、やる!または、やってみたい!
そんな考え方に変わってきていた。

おそらく、家に帰ればごたごたしたいやな出来事を、忘れるかのように頻繁に美容室に来るようになっていた。

一ヶ月に一回が、週一に。そして三日に一回。ひどい時は毎日。

僕の売上は上がるが、なにやら気持ちが晴れない。

彼女のストレスはひどく、髪の毛をキレイにしたぐらいでは、到底癒せてはなかった。

今まで裕福であった「家」が音を立てて崩れはじめていた。

当時二七歳だった彼女は、生まれてはじめて経験する「不安」にだんだん「心」が壊れていくのが見えた。

そんな時、美容師は何が出来るか?

「何も出来ない」・・・

そんなある日、仕事が終わって練習をしていると、電話が鳴った!

電話の向こうの声は、あかねさん。

少し酔っている。

いきなり・・・・

「私を連れて逃げて」!!

さあ衝撃の言葉が出てきました。この後片山はどんな行動にでるのか!

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