副題として「男になろうとしたお嬢さま」という題がピッタリかと思います。純粋で天真爛漫なお嬢様が、ある事情から人生を 転落していきます。そしてある日「男」を目指すようになります。でもやっぱり「女」として生きていく事を決心していきます、そんな壮大?な物語になります 。
第一話 「出会い」
「片山さ~ん。今日は髪の毛を角刈りにして」
三ヶ月ぶりの久しぶりのご来店。
いつになく、あかね(仮名)さんは強くオーダーしてきた。
彼女とはもう五年ぐらいの付き合いがある。
時々とっぴな行動をとる事はあっても、髪の毛はとても大事にしてきた女性。
いきなりの「角刈り」に僕は戸惑った。
あかねさんとの出会いは、ある有名なクラブのホステスさんからの紹介からだった。
お父さんが地元で古くからの名家で資産家のお嬢様だと・・・
たまたまお父さんと一緒にいったクラブで、髪型のことをホステスさんに話したところ、うちの店の名があがって来店してきた。
僕が担当する事になり、いきなり彼女は、
「店で一番上手な人にしてもらいたいの」
なんて、いってきた。
しかし、当時の僕は、カットに入って間がなく、まだ先輩や、店長も上にはいて、
「いやだな~」っとこう言う時は正直思うもの。
しかし・・・僕は・・・
「知らん顔して、カットのオーダーを聞き始めた」
すると、あかねさんは、髪型のことではなく、当時のアイドルの話を振ってきた。
「変な人」って思いながら、適当に答えた。
そして、また、「どれくらい切りますか」?
なんて聞くと、
「あたしねぇ~、ゴルチエが好きなの」
「ゴルチエ」?
今度はブランドの話になっていった。
「いつになったら、髪の話ができるのか」?
僕は少し焦っていた。
しかし・・・
実は彼女には「髪型」などどうでもよかった。
とにかく話がしたかったのだ。
あかねさんは、どんなに「髪型の要望」を聞いても、このときは、全く答えることがなかった。彼女の心の中には、美容師なんていやなやつばっかりっという気持ちがはびこっていた。
過去何をオーダーしても、決して思い通りにならない髪質に嫌気がさしていた。
くせ毛で、多い髪の毛、どんなにいいシャンプーを使っても結果は一緒!
けっして美人ではない彼女は、コンプレックスの塊だった。
あかねさんは、この後、僕の美容技術を飛躍的に上達させる要求を次々してくるようになる。
さて、わがまま極まりないお嬢様のあかねさんは、この後どういった転落人生になっていくのでしょうか?
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