最終章「男になりたかったお嬢様」

「主任」座るところがもうありません。今からパーマをかけたいそうですが、どうします。

移転先は、結局、開店以来思うように客足が伸びない二号店のテコ入れのような形で、僕は
「主任」として配属された。

しかし、それは結果的には大失敗。っとそんな話ではないので、この話はいつか・・・

毎日、嵐のような忙しさの中、すっかり「あかね」さんのことは忘れていた。

しかし、神様っていますね(笑)

ちゃんと、偶然を作り上げていました。

それは、福岡での講習帰り。ふとタバコを買いにコンビニよった。

いらっしゃいませ!と、男とも女ともわからない、ドスの利いた声。

ななっ なんとその正体は、ただのおっちゃん(笑)

ぼくはコンビニを出た。

おなかがすいた。

後輩とラーメンでも食おうか、なんていっていたら、屋台が

よっしゃ!あそこで

いらっしゃい!と、甲高い声!

???  なんか聞いた事のある声

そこには、ななっなんと「あかねさん」

わぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~

ラーメン店主???????????????

僕はびっくりこいたのと、そのシチュエーションがよくわからず
とっさに出た言葉が、

「太ったねぇ~」

なんかもっと違った言葉を出さんかい!

とにかくそこには、消息不明の「あかねさん」がラーメンの手棒を振っていた。

目を疑った!しかし妙に似合ってる!

彼女は自分の住んでいる町からはるか遠くの福岡で、「ラーメン店主もどき」で生きていた。

まあバイトみたいなもの。

積もる話は、ラーメンを食べる時間では到底足らず、「酒を」になる

酔っぱらった!「あかね」さんは、とてもうれしそう。

あの電話からもう十ヶ月ぐらい過ぎていた。頓珍漢なメイクもなく、洋服はトレーナーにジーパン。

とても以前の令嬢の雰囲気は消え、必死に生きていく姿に写った。髪の毛はロングになり、後ろでくくってる。

帰りぎわ、僕は名刺を置いた。

「また、帰ってきたら寄って下さい」「待ってます」

一ヶ月が過ぎたごろ、「あかね」さんはやってきた。

どかどかどかっと、怒ったような顔つきで僕の前に来る!

なんか様子がおかしい。

気迫が感じられる。     

つぎの瞬間!

「男」になる

????

「男になりたいの」「片山さん!!髪っ切って」

「角刈り」

「わかりました」

どうぞ!

バサっ!バサっ!バサッ!

僕は、黙って切った

女性を角刈りにしたのは、後にも先にも「あかね」さんだけ(笑)

まあ通常女性はオーダーしませんよね(笑)

しかし、僕はこの時「肝の据わった人の気迫」というものを見せてもらった。

そこには、理由など聞く必要もなく、相手も何もしゃべらない。

ただ、ただ、時間だけが過ぎていく。

何度か経験することになるが、周りの音がすべて消えてしまう。

「角刈り」は一応完成した。

「あかね」さんはにっこり笑って、ぽつっと、

「ヤッパリ男にはなれないね」

「あかね」さんの、お父さんはなくなり、会社もつぶれ、お母さんは後を追うようになくなり、兄弟のいない彼女は、「一人」だと聞いた。

住んでいた家も人手に渡り、今ではそのあたりにはたくさんのお店が立ち並んでいる。

風のうわさも今は、僕のところには届いてこない。

しかし、「あかね」さんという存在は、僕の脳裏には強烈に残っている。

恋愛感情もなく他人の心に印象を残すその存在感。

僕に言わせれば、「長島茂雄」級

人間ってすごいね!!

「あかね」さんに幸せが、なだれのように降りかかるのを願って、この話を終わります。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP