「じゃ~ん」と、一言大きな声で
いきなり現れてきたのは、ななっ、なんと
怪獣ブースカ(ふるっ)のような着ぐるみ。
コシノジュンコ作だという。やけに大きいパーカーの色は黄色。グリーンとオレンジがところどころ混ざっている。そして、お尻からしっぽの生えたその洋服は、普段の彼女のセンスからは到底想像の出来ない代物だった。
ありえねぇ~~~~~~~~~~~~~
ブルーのアイシャドウがやけに浮いている(笑)
チークも少しきつい。
全く洋服と合っていないそのメイクがやけに、洋服の奇妙さを引き立てていた。
「片山さ~ん」写真とってぇ~
「一緒に入って~」
あかねさんは、この時すでに「壊れ始めていた」
行動が普通の人の取る常識からかけ離れていき始めていた。
モノトーンや白を基調にした洋服を好んで着ていたのが、原色を多く使った趣味の悪い色使いに変わっていった。
お化粧もとてもきつい化粧に変わっていった。(僕のせい?)
もともとそういった要素はかけらも見せていなかったので、当初は戸惑った
わがままな性格は、長く担当していれば、何とかなっていくのだが、
心が崩れていくは見ていてつらい。
「あぶね~」正直そう感じてきた。
さらに、天真爛漫な性格が余計に「危なさを」助長していた。
あかねさんは、毎晩店に電話をしてくるようになっていた。
当時の僕はほとんど十一時ぐらいまで店にいたので、話は出来た。
しかし、ほとんど会話は同じ事の繰り返し。
「連れて逃げて」はなくなっていたが、大抵飲み屋のお兄ちゃんの話
当時流行っていた店の名前はほとんど出てきた。
毎晩すごいな~とは思っていたが、安月給の僕には到底縁のない世界だった。
十日も続くとさすがに、うざくなる。
僕は、
「あかねさん」「練習の邪魔になるから、ちょっと遠慮してもらえますか」
なんて、軽く言ってしまった。
この軽く言った言葉が、あかねさんには物凄くきつかった。
後で聞くことになるのだが、この時あかねさんは、お父さんの看病を一人でやっていたそうで、会社の方もほとんど再起不能の状態までになっていて、にっちもさっちもいかない状態だった。
「強がり」「意地っ張り」「見栄っ張り」、そんな悲しい言葉がピッタリだったのかもしれない。
僕の何気ない「言葉」で彼女の来店はプツリと途絶えたのだ。
そして、僕がいた店は、移転へと動き出していた。
移転の連絡を入れても連絡は取れず、彼女の消息はまったくつかめなくなっていた。
僕は移転の忙しさから「あかね」さんのことはほとんど忘れていった。
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