「第四話」

「じゃ~ん」と、一言大きな声で

いきなり現れてきたのは、ななっ、なんと
怪獣ブースカ(ふるっ)のような着ぐるみ。

コシノジュンコ作だという。やけに大きいパーカーの色は黄色。グリーンとオレンジがところどころ混ざっている。そして、お尻からしっぽの生えたその洋服は、普段の彼女のセンスからは到底想像の出来ない代物だった。

ありえねぇ~~~~~~~~~~~~~

ブルーのアイシャドウがやけに浮いている(笑)

チークも少しきつい。

全く洋服と合っていないそのメイクがやけに、洋服の奇妙さを引き立てていた。

「片山さ~ん」写真とってぇ~

「一緒に入って~」

あかねさんは、この時すでに「壊れ始めていた」

行動が普通の人の取る常識からかけ離れていき始めていた。

モノトーンや白を基調にした洋服を好んで着ていたのが、原色を多く使った趣味の悪い色使いに変わっていった。

お化粧もとてもきつい化粧に変わっていった。(僕のせい?)

もともとそういった要素はかけらも見せていなかったので、当初は戸惑った

わがままな性格は、長く担当していれば、何とかなっていくのだが、
心が崩れていくは見ていてつらい。

「あぶね~」正直そう感じてきた。

さらに、天真爛漫な性格が余計に「危なさを」助長していた。

あかねさんは、毎晩店に電話をしてくるようになっていた。

当時の僕はほとんど十一時ぐらいまで店にいたので、話は出来た。

しかし、ほとんど会話は同じ事の繰り返し。

「連れて逃げて」はなくなっていたが、大抵飲み屋のお兄ちゃんの話

当時流行っていた店の名前はほとんど出てきた。

毎晩すごいな~とは思っていたが、安月給の僕には到底縁のない世界だった。

十日も続くとさすがに、うざくなる。

僕は、

「あかねさん」「練習の邪魔になるから、ちょっと遠慮してもらえますか」

なんて、軽く言ってしまった。

この軽く言った言葉が、あかねさんには物凄くきつかった。

後で聞くことになるのだが、この時あかねさんは、お父さんの看病を一人でやっていたそうで、会社の方もほとんど再起不能の状態までになっていて、にっちもさっちもいかない状態だった。

「強がり」「意地っ張り」「見栄っ張り」、そんな悲しい言葉がピッタリだったのかもしれない。

僕の何気ない「言葉」で彼女の来店はプツリと途絶えたのだ。

そして、僕がいた店は、移転へと動き出していた。

移転の連絡を入れても連絡は取れず、彼女の消息はまったくつかめなくなっていた。

僕は移転の忙しさから「あかね」さんのことはほとんど忘れていった。

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