都会とは程遠い田舎町にある、わが店は、
まわりに古くからのお店はあるものの
最近では隣町の開発が活発で、少しさびれた感じもする。
そんな町のJR駅の名と言えば、今の時代には見ることのできないような国宝級である。
そんな駅前の一等地?に古い一軒家を借り、夏は強い西日を浴び
冬は地の底から寒さがしみる、季節感あふれる場所で、そんなことは
気にしないありがたーいお客様にめぐまれ、日々忙しく 楽しく過ごしている。
店内からは外の景色がすべて見え、行き交う人々が見渡せ、飽きのこない時間がすぎる。
ある日、ひとりのおいちゃんに目を奪われた。スーパーのレジ袋を下げていた。
おいちゃんの似顔絵公開
突然に
店の扉が開き出会いは突然やってきた
おいちゃん 「うちの女房はおるか」
新規開店まもない店内。お客の顔さえもまだ真新しい、知らんおいさんの女房なんか
わかるわけないやろう(怒)
おいちゃん 「昨日からパーマ屋にいって帰ってこん√」
スタッフ 「き・き・きのう∂」
長く美容師をやっているが、昨日からパーマに行って帰ってこないおばちゃんなんか
聞いたことねえぞ”
おいちゃんは怒ってた。ものすごく怖かった。片手のレジ袋を除けば。
女房は結局来ておらず、「何でこの店にこんのかのう」 とうれしいセリフを残し
店を出ていた。
心なしか後姿に哀愁が漂っていた。(涙)
次の朝一番
「まだ帰ってこん√」
その声は震えていた。
昨日の怖い顔から焦りにも似た顔つきになっていた。
そしておいちゃんの、長い呪恐のようなネガティブな人生を語り始めた。
店内のお客を気にする様子はまったくなく、暗くつらい人生を、自分の娘
よりはおそらく若いであろう、スタッフに・・・
片手にはやはりレジ袋が下がっていた。
今もおいちゃんは、店の前を日に四回以上顔をみせる。
おいちゃんはすごい。年中無休である。雨の日も風の日も嵐にも負けずである。
まるで平成の宮沢賢治である。
おいちゃんは、すべてにおいて愚痴る。そしておいちゃんは絶対帽子をかぶっている。
おいちゃんはマイナス思考の天才である。ココまで貫ける人は世界中今の時代少ないだろう。
何よりおいちゃんは、天才ゆえに妙に明るい。根暗さがない。凡人と違うところだろう。
そしてさらにすごいところは、マイナス思考を気が付いていないところだ。
ココまで来るにはよほどつらいことの連続だったに違いない。(笑)
おいちゃんは今日も店の前を歩いてくる
出会って九年たった今でも片手にはレジ袋が下がっている。
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